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第4話
***
呼子笛が、鳴る。
(どういうことなのれしょう)
菊一文字を肩にかつぎ、辻は全速力で走っていた。
今夜、不逞ソロたちが決起しUFAの要人を斬る計画があるという情報があった。
飯田以下隊士のことごとくは色めき立ち、市中の要所要所を張った。
張った網を、かいくぐった場所から呼子笛が鳴っている。
盲点を突かれた。そうとは思えない。
(情報が、漏れている?)
「ののちゃん!」
後ろから、声。
飯田であった。数人の隊士を引き連れ、やはり走っている。
「どういうこと? カオリ全然わかんない!」
「ののも、全然わかんないれす。
とりあえず、急ぐしかないのれす!」
「うん」
返事をするやいなや、飯田はたちまち加速する。
辻とは、歩幅が違う。
飯田はたちまち見えなくなった。
辻が追いついたときには、飯田はすでに腰の虎徹を抜いていた。
斬撃が、血の雨を産んでいる。
飯田は長身である。
刀を振るう挙動が極端に大きい。
それが、よく当たる。
虎徹が一閃するたび、人の指や耳がばらばらと空中に舞い上がっている。
「い…」
「飯田さん」
辻の前に、飯田の名を呼ぶ声があった。
「そこまで」
飯田の剣が、ぴたりと止まる。
4つの提灯が、飯田を取り囲んでいた。
「そちらの浪人どもはこちらで押さえた者ども。
手出し無用を願いたい」
辻は声を呑んだ。
(斉藤、瞳)
『メロン記念日組』。
『モーニング娘。組』と同様、UFA守護のために結成された浪士団である。
が、規模、実力共に『モーニング娘。組』には大きく溝を開けられていた。
(メロン風情に、先を越された?)
辻の中で釈然としないものが広がる。
「のろまな『娘。組』の皆さんは帰って寝ていらしたら?」
『メロン記念日組』メルヘン担当の村田めぐみが憎まれ口を叩く。
それで、とっさに身体が動いた。
「のの!」
飯田の制止も間に合わない。
一閃の、剣戟。
誰の目にも一撃に見えた。
両の目と喉元。
村田の身体に三つの穴があいていた。
ざっ、と血の筋が空中に放たれる。
村田は、倒れることもできない。
絶命していた。
辻希美の三連突き。
そう呼ばれていた。
***
局中の士気は、目に見えて下がっていた。
功を横取りされた。それが原因だった。
ユニットだろうはソロだろうは、根底にある思想は同じものだ。
すなわち功を上げ、名を上げる。
この信念の元に無数の少女たちが剣を取り、刃を振るう。
そんな時代だった。
「皆さん、ネガティブになっちゃだめです!」
甲高い声が響いた。
5番隊隊長、石川梨華である。
新撰娘組には珍しく甲州流軍学を学んだ軍学者。
局内では、少し浮いた立場にいる。
「清国の古い兵法の言葉にもあります。<いつだってポジティブポジティブ>!」
誰一人、口答えする気力もない。
「ほら立って! 皆さんあの<ぽじてぃぶ>の旗の元に!」
勢い込む石川の指差す方向には、なにもない。
「あれえええ!?」
「あの旗やったら、石黒さんが子供の布オムツに欲しいいうから持ってってもらったで」
床に寝転んでいた加護が面倒くさそうに教えてやる。
かつて4番隊隊長を務めていた石黒彩は幕府の重臣と結婚し、すでに隊を脱していた。
近所に住んでいるため、よく遊びに来ている。
「そんなああ」
石川の甲高い声が、その場にいた全員の癇に障った。
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